からだの中の虚空特異点様

からだの中の
虚空特異点様

BOOK 08

身体の中
虚空特異点様は、
ある身体の中で
暮らしていました。

本人は、
暮らしているつもりは
ありませんでした。
血管を流れる
血管を流れたり。

赤い流れに乗って、
身体の中を旅したり。

なかなか快適でした。
心臓
ドン。
ドン。
ドン。

心臓は、
ずっと音を鳴らしていました。

虚空特異点様は
その振動が好きでした。
神経
神経には、
小さな信号が走ります。

ピカッ。
ピカッ。

虚空特異点様は
追いかけて遊びました。
脳
ある日、
脳までやってきました。

虚空特異点様は尋ねました。

「ここが、
意識の場所ですか?」
脳の中
返事はありません。

記憶。
音。
匂い。
言葉。

たくさんのものが
行き来していました。
身体を旅する
虚空特異点様は、
身体のあちこちを探しました。

でも――

「私」というものが
どこにあるのか、
見つかりませんでした。
静かになる身体
そして、
ある日。

心臓の音が、
ゆっくり静かになりました。

神経の光も、
消えていきました。
意識の街角
気がつくと、

虚空特異点様は
知らない街角に立っていました。

看板には――

「意識の街」
クマムシおばちゃん登場
そこへ、
買い物袋を持った
クマムシのおばちゃんが
歩いてきました。

「兄ちゃん。
どこ行きたいん?」
クマムシおばちゃんと会話
虚空特異点様は言いました。

「私は、
身体から来ました。」

クマムシおばちゃんは答えました。

「みんな最初は、
そう言うねん。」
意識の街を案内
クマムシおばちゃんは
道を指しました。

「あっちは記憶通り。」

「こっちは無意識横丁。」

「あそこは感情市場や。」
夢の交差点
「その先は?」

虚空特異点様が聞くと、

クマムシおばちゃんは
首をかしげました。

「知らん。」
知らない道
「案内してるのに、
知らないんですか?」

「そらそうや。」

「全部分かっとったら、
案内なんか
おもろないやろ。」
WHY
身体が終わったとき、
意識も終わるのでしょうか。

それとも――

私たちがまだ知らない
何かがあるのでしょうか。

この先は、
誰にも分かりません。

WHY?
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