むかしむかし。
……というほど
昔ではありません。
道ばたに、
ひとつの小石がありました。
誰も立ち止まりません。
誰も手を合わせません。
もちろん、
お賽銭もありません。
ただの小石ですから。
雨の日も。
風の日も。
暑い日も。
寒い日も。
小石は、そこにいました。
ときどき、
誰かの靴に蹴られて、
ころころころ……。
場所が少し変わります。
それだけでした。
ところが、ある日。
ひとりの人が
小石の前で立ち止まりました。
「……なんだ、この石?」
その人は、
なぜか小石を拾いました。
きれいだからでも、
珍しいからでもありません。
なんとなく。
そして、その先に
一枚の座布団がありました。
なぜ、そこに
座布団があったのか。
それは誰にも分かりません。
その人は、
小石を座布団の上に
そっと置きました。
その瞬間――
ただの小石なのに、
なぜか……
ものすごく
偉そうに見えました。
ひとりが立ち止まり、
ふたりが立ち止まり、
やがて誰かが言いました。
「これは……
小石様では?」
こうして、
昨日まで
ただの小石だった石は――
「小石様」になりました。
しかし。
誰も、まだ
気づいていませんでした。
小石を地面に置けば、
ただの小石。
では――
本当にすごいのは、
どちらなのでしょう?
小石様は、
今日も座布団の上に
静かに鎮座しています。
まだ誰も、
座布団には祈りません。
……まだ。
WHY?